署名捺印した契約書は有効か?×民法90条等×ハンコ文化
別の投稿で、芸能事務所と所属タレント間の関係について、記載しました。
sousuke22101243.hatenablog.com
その後、複数の方面から、「契約書に署名捺印しても無効にできるのか?」という質問を頂いたので、改めて契約とは何であるかについて、契約が無効となる場合について等をなるべく簡単にまとめたいと思います。
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1.そもそも契約とは
法律の解釈上、契約とは、「双方の意思表示が一致した時」とされています。
例えば、パン屋さんにパンを買いに来たお客さんと店員がいると想定します。
客:「このアンパン下さい」
店員:「はい、アンパンですね、100円です」
客:「はい、100円です(お金を渡す)」
この瞬間、「アンパンを100円で買いたい」という客と、「アンパンを100円で売ります」という店員の意思が一致しています。この時、契約(売買契約)が成立しています。
このような場合は一般的な生活の場面であり触れております。しかし、言うまでも無いですが、いちいち契約書を交わすような事はありません。
すなわち、「契約の成立が成立しているか否かの段階においては、契約書の有無は無関係ということになります」
2.契約が無効になる場合・取り消しとなる場合
契約が無効になる場合には、「無効」と「取り消し」とがあり、実際はその法的効果はやや異なるのですが、ここでは細かくは触れないでおきます。
要は、「契約が無効になる・無効にできる場合がある」とだけ覚えておいて下さい。
3.契約を無効にできる場合
契約を無効にできる場合においては、色々な種類がありますが、一般的な生活をしている場合と想定すると、以下のパターンぐらいと覚えておくだけで十分と思います。
(1)公序良俗違反(民法90条)
契約を無効にできるものとしての典型です。公序良俗違反とは、ざっくり言うと、「常識的に考えてあり得ない」という類のものです。
例えば、以下の例が考えられます。
①「お金を借りる」、「お金を貸す」という契約において、「返せない場合は死ななければならない」という条項がある。
②「毎月〇万円支払う」という条項がある「愛人契約」。
①については、お金を返せない場合の罰則として命を奪うというのはあまりにも常識的に考えて重すぎるということで無効となります。
②については、そもそも愛人を持つということ自体が許されていないため、このような契約自体が無効ということになります。
その他、色々なパターンが考えられますが、世の中には公序良俗違反に該当すると思われる契約を結ばされているケースというのは思いの外多いようです。
「あまりにも不利な契約を結ばれてるかもしれない。おかしいかもしれない。」と思った時には、契約の内容が公序良俗に違反する可能性がありますので、専門家に相談した方がよいでしょう。
(2)錯誤(民法95条)
錯誤とは、簡単にいうと、「間違って結んでしまった契約」という契約になります。
極端な例で説明すると、「1万円相当の物」の売買契約において、「数値を書き間違えて、100万円」と書いてしまった場合があります。
このような場合、「1万円で買いたい」という意思と、「100万円で購入する」という意思が一致していません。この場合、「錯誤」があるとして、契約を無効にすることができます。
ただし、間違えた側があまりにも不注意であったりした場合等には、無効にできない場合もあります。
「1万円相当の物を100万円で買うということが常識的に考えてあり得るか」という点と、
「100万円で売ることができるとして期待したにも関わらず、無効とされる、売る側の不利益」のバランスが考慮されます。
(3)強迫(民法96条)
強迫とは、文字通り、「強く迫る」という意味となります。刑事罰の対象となる「脅迫」とは異なります。
例えば、「取引をしないと、ひどい目に遭わせる」などと脅して契約をさせたり、軟禁状態や暴力をふるう等して、無理やり契約をさせたような場合です。
このような場合も契約を無効とすることができます。
(4)詐欺(民法96条)
詐欺とはいわゆる「騙されて契約した」場合となります。
ただし、詐欺による場合は、契約は無効ではなく、「取り消すことができる」という規定になっている点に注意が必要です。
※無効と取り消しの違い:「無効」とは、何もしなくても契約が最初から無かったものとなるということですが、「取り消し」とは「取り消します」という意思表示が必要である点、また、一定期間経過すると取り消すことができなくなるという点にも注意が必要です。
3.クーリングオフ制度について
訪問販売やキャッチセールスにおいて、突然の出来事であったり、長時間の拘束を嫌って契約をしてしまうケースがあり、そのような契約を取り消すことができる制度としてクーリングオフ制度があります。
これは特定商取引法に記載されている場合が多いです。
契約をしてしまった時の状態や、商品の種類等によって、契約から何日後までにクーリングオフができるかという点が異なる点に注意が必要です。
4.契約書の署名捺印
契約書に署名捺印をしてしまったら、例えどんな契約であっても守らなくてはならないと考えてしまう人が意外に多いようです。
しかし、上記の通り、一方にとってあまりにも不利な契約内容であったり、一方が正常でない状態で契約をさせられた場合には、例え署名捺印をしてしまったとしても、無効であったり取り消したりすることができるという点はしっかり覚えておく必要があるでしょう。
5.欧米におけるサイン文化と日本のハンコ文化
ちなみに、署名捺印についてですが、捺印、つまりハンコの文化は日本特有のようでして、欧米ではまず見ることはありません。欧米では基本的に全てサインです。
そもそも、100円ショップでも購入することができるようなハンコによる捺印が契約成立の有無等について重要視されるというのもおかしな話ではないかと思います。
また、近年では電子サイン等も普及してきており、契約時にもわざわざ両者が顔を合わせたりすることもなく、契約書を郵送等することもなく、電子ファイルを送信して、電子的にサインをして終了という事が多くなってきています。
未だに日本の各種公的機関における書類には、「捺印」を求められることが多いですが、そろそろこの捺印・ハンコの文化からは脱却した方がよいように思います。
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